USCPAを目指したきっかけ
企業の過去を表す「会計」、現在を拘束する「法律」、未来を左右する「経営」判断はもはやITと不可分の関係です。これらの三大分野の汎用的なスキルとITをブリッジングできる人材こそがITプロフェッショナルであり、今現在まさに世界で求められているITの人材です。USCPAの試験においては、これらの分野がもれなくカバーされており、試験合格は一定の知識を習得したことの証明になりますからIT中心の業務に携わっている私にとって試験合格を目指すことは自然な流れでした。
CPA試験学習前には仕事をしながら経営学修士・MBAも修得しましたが、科目は経営判断に軸がおかれており会計や法律についてはまだまだ勉強不足でした。そして高校・大学と英語圏でしたので英語で勉強することに慣れており、語学面のハードルが無かったのも後押ししてくれました。
合格までの学習期間、実際の学習時間、具体的な学習方法
合格までの学習期間 | 1週間当たりの平均学習時間 | |
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平日 | 休日 | |
1.5年間 | 1〜2時間 | 10〜20時間 |
平日は仕事に集中する。休日は(長時間滞在が迷惑とならなさそうな)喫茶店で勉強する。メリハリをつけました。何度も何度も教材を往復すると強引に暗記しようとしなくても人の顔を覚えるように自然と頭の中に入りました。理解も深まりました。強引に丸暗記するのは精神的に疲れます。やめましょう。
試験直前期の勉強方法
最初はeラーニングの講義とBISKを中心に学習しました。過去の経験が私に近い人はBISKだけでFAR, BECの試験対策は十分だと思います。一方でAUD、REGはWileyを頼りました。特にREGは時間がある方はWileyの力を借りたほうが良いと思います。なお、高価な教材は不要です。
※当校ではBISK、Wileyの過去問題合わせて6,000問以上を解説付きでWEB上に掲載しております。
各科目の試験の感想
FAR
会計士試験というだけあって会計の本丸であるFARが一番難しかったです。計算式や条文の丸暗記だけでは対応が難しい良問も他の試験に比べて割合が高かったと思います。他の受験生も困ったのか試験後に一番自信が無かったこの科目が四科目中で一番点数が高い結果になりました。
REG
暗記しなければいけない内容が非常に多く、米国特有なものも多いので注意が必要な科目だと思います。また、財務と税務の処理の違いなどFARとREGを同時に学習すると混乱する可能性もあると思います。FARの理解を確実にしてからREGに取り組むという私が取った方法は間違っていなかったと思います。
AUD
会計士がするReview活動といってもどういう状況でのReviewなのか。全く同じに見えて実は若干違っていることがありますので、こういった知識の積み重ねが合格を左右することもあるかと思います。また、文面が似通った問題が複数出題されたことが多いと思います。聞かれていることが変わっていた場合もありましたが、そうでない場合も散見されました。一問できない=複数問できないということになりかねません。基本的事項はしっかりと把握する必要があります。
BEC
範囲が広く、試験対策本の内容の丸暗記だけでは対応できない難問もあると思います。経済学、経営学、ITの事前知識があるかないかで難易度が相当変わるのではないかと思います。
最も時間のかかったのはAUDとREG
米国特有の事柄含めシステマチックに暗記しなければならない事項が非常に多いです。これら2科目は勉強不足で1回目の受験をしてしまい受験回数が2回となりました。大学と大学院で経済・経営を勉強していた上、仕事はITですからBECは苦戦しませんでした。FARは日商簿記2級合格後でしたのでスムーズに習得できました。
試験会場の印象
プロメトリック試験会場は各種IT試験や証券外務員試験などでも活用されていますので慣れている人も多いのではないでしょうか。日本受験で済ませましたが、東京・横浜・大阪と全受験会場を回りました。
試験後の反省点や、事前にやっておいた方がよい点
やっておいた方が良いこと:
過去問だけではなく、試験対策本のチャプターの記述も一回は通読しておいたほうが良いと思います。新たなトピックが試験対象となったときには過去問だけでは対応できません。通読していたことによって救われたと思うことがかなりありました。4択問題は何が出題されても満点を狙うつもりで挑めば合格が早くなると思います。4択を確実にすればシミュレーションも楽になります。
あと、シミュレーションの問題はResearchタブを活用することを忘れずに。解き方に困ってもResearchタブで問題の解き方を発見できる場合が多くあるはずです。試験後に気づきました。
受講してよかった点、事務局への要望など
試験対策を考える上で講義は「スターター向け」であると思いますので、講義や講義のテキストだけでは試験対策は不十分です。最初から不慣れな分野で分厚い本を独学するのは難しいと思います。その「スタートアップ」を助けるために講義はある。その点は強調されたほうが良いと思います。
事務局の方の質問に対する回答が早いです。他の受験指導校を別の試験対策で利用していたことがありましたが、数時間?2日程度で回答が来ることを期待するのは無理でした。受験手続のフォローや試験合格後のフォローを行っていない指導校も見受けられます。試験合格後の単位後付けを認めていない州が増えてきております。比較的受験要件が厳しいグアム州の要件を満たしておけば、後々何かあったときのために安心かと思い単位取得プログラムも活用させて頂きグアム州出願で受験しました。
合格後、こんな風に役立っています。
習得事項は重箱の隅を突付くものではなく実践的なものが多いことから合格する前から仕事にも転職にも役立っています。活用するかしないかは本人次第で、考え方によっては、行動の仕方によっては、今日からでも活用できるでしょう。
これからUSCPAを目指す方へ
科目毎の合格率がほぼ4割台で安定しているということは、いつ何の科目を受験しても受験生の半数以上は落ちます。他の受験生も勉強しています。受験にかかる費用も安くありません。日本の公認会計士試験と比較されることがよくありますが、奇問難問が少なく合格率は高くてもそれなりの試験対策費、受験料、滞在費を払った受験生が世界中から集まる相対試験で決して易しい試験ではないと思います。試験時間だけでも14時間かかります。合格するためにはそれなりの時間が伴うことは知っておいたほうが良いと思います。
高価な教材を別に入手する必要は無いでしょう。
過去問だけではなく、面倒でも分厚い試験対策本の中身を一回は簡単でも良いので通読することをお勧めします。余裕を持って全科目80点以上を確実に目指して合格するには必須だと思いました。BISKと時間に余裕がある人はWileyも。高価な教材に次から次へ手を出すのではなくて一つの教材の中身をマスターすることの方が良いと思います。
最後に
新卒採用に代表される日本の学校教育や会計士に代表される日本の国家試験は雇用を保障するような考えが根底にあるようですが、日本から一歩外に出れば学校を卒業することや試験に合格することと、その後の人生をどうするのかは別と考える節があります。
人生をどう切り開くかはその人次第。一方でさまざまな方向性、可能性を増やしてくれます。
USCPA試験合格は外資系企業や海外で仕事をする人にとって方向性・可能性が広がる一つのきっかけとなることにはほぼ間違いないと思われます。実務で直ぐに使えそうな習得事項も多いです。